初デートが公園って、ありえないんですけどっ!?

初デートが公園って、
ありえないんですけどっ!?

あらずじ

佐野和之(さの かずゆき)は社会人になって数年、初めての挫折に心が折れそうになっていた時、学生時代に同じサークルに所属していた先輩の松田美菜(まつだ みな)と偶然再会した。このやりとりがきっかけとなり交際を開始した2人だったが、都合が合わず合わずを繰り返し、初デートは忙しい梅雨の時期を乗り越えた1ヶ月後になってしまった。
空白の期間を埋めるためにも失敗は許されない初デートだったのだが……。
想いと想いが交差する初デート。気持ちの行き違いの末に、初夏の太陽は微笑むか――?

登場人物

男性:佐野 和之(さの かずゆき)

・見た目は、さわやか系黒髪メガネ・美菜より年下の青年。社会人になって数年だが、基本的には非常にしっかり者でクール。
・元気過ぎて慌ただしい美菜のことを守ってやらなければという気持ちでいるが、心配なだけではなく、本当に辛い時に支えてくれたことへの恩返しの気持ちでいる。
・クールに見せかけた若干陰キャ気質なシャイボーイなのである。

男性:佐野 和之(さの かずゆき)

・見た目は、さわやか系黒髪メガネ・美菜より年下の青年。社会人になって数年だが、基本的には非常にしっかり者でクール。
・元気過ぎて慌ただしい美菜のことを守ってやらなければという気持ちでいるが、心配なだけではなく、本当に辛い時に支えてくれたことへの恩返しの気持ちでいる。
・クールに見せかけた若干陰キャ気質なシャイボーイなのである。

女性:松田 美菜(まつだ みな)

・明るめな色合いのロング髪が印象的な元気な女性。
・見た目が美人だが、口を開けば学生にも聞こえるほどの天真爛漫さが玉に瑕。
・和之のことが大好きで仕方ないし、年上の女性として守ってあげなきゃって
 思うものの、和之の方がしっかりしてるのとバカにされ気味なのがちょっと不服。
・それ故に、普段クールな和之の可愛い一面を見つけてはからかい、そして怒られる。

女性:松田 美菜(まつだ みな)

・明るめな色合いのロング髪が印象的な元気な女性。
・見た目が美人だが、口を開けば学生にも聞こえるほどの天真爛漫さが玉に瑕。
・和之のことが大好きで仕方ないし、年上の女性として守ってあげなきゃって
 思うものの、和之の方がしっかりしてるのとバカにされ気味なのがちょっと不服。
・それ故に、普段クールな和之の可愛い一面を見つけてはからかい、そして怒られる。

本文

【佐野】
……ようやく、ようやくだ。


【佐野】
お互い働いてるわけだし、当然と言えば当然なんだけど。


【佐野】
予定を合わせるのもこんなに大変だなんてなぁ。


【佐野】
しかし初デートって、どこに行けばいいんだろうな。


【佐野】
一応、参考になりそうな雑誌を買ってみたものの、デートなんてしたことないし。


【佐野】
まぁどうせ、遊園地とか水族館、動物園、映画館。そんなところだろうな。


(雑誌を読みながら頷いたり、相槌を入れたり)


【佐野】
……なるほど。これは盲点だ。そういう考えもあるのか。


【佐野】
確かに。長く付き合いたいならお金をかけるよりも……長く……か。


【佐野】
結婚をすることを視野に……か。い、いや。まだ初デートもまだなのに結婚なんて早いかもしれないけど。でも……そうだよな。いずれは……。



(結婚を妄想するような間)



【佐野】
……っと! まずい、風呂に湯を張ってるところじゃないか!


【佐野】
ああぁぁ、あふれていないでくれ! 最近は光熱費もバカにならないんだ。


【佐野】
……こんなことも、美菜と一緒になれば無くなるのかな。


【佐野】
いや、もっと騒がしい毎日になるのかもしれない。


【佐野】
その為にも、この初デートを最高の日にしなくちゃな。数日しかないけど、頑張ろう。


【佐野】
(なんて考えていたのになぁ……)


【松田】
ねぇ、聞いてる? そんなに私とのデートが嫌だった?


【佐野】
どうしてこうなった!


【松田】
こんなにも暑いのに、公園でデートしようなんて言うからでしょ!


【佐野】
いや、それは。


【松田】
今日の最高気温は?


【佐野】
えっと……31℃?


【松田】
そう! サーティワン! アイスも美味しくなる気温じゃない!


【佐野】
お散歩日和には、少し暑かったですよね。


【松田】
お散歩ならまだ許せるかもしれないけど! 初デートだったのに!


【佐野】
もっと涼しい午前中からの方がよかったですか?


【松田】
いや、それはその……楽しみで夜も眠れなかったし?


【松田】
今日の服だって選ぶのに凄く時間がかかっちゃったからいいんだけど。


【佐野】
じゃぁ、夕方から?


【松田】
せっかくのデートなのに一緒に居られる時間が短くなっちゃうからやだ……。


【松田】
って違う! そういうことじゃなくて! どうして初デートなのに場所が公園なの!?


【佐野】
でも、聞いたら即OKのメッセージ送ってくれたじゃないですか。


【松田】
そうなんだけど……だって、やっと予定が合って嬉しかったから。


【佐野】
だったら問題ないのでは。


【松田】
問題ありますぅ! 嬉しかったから、日付だけ見てすぐOK言っちゃっただけで。


【佐野】
ゆっくりちゃんと読んでから返信くれても良かったのに。


【松田】
だって、時間経って返したら、『ごめん、別の予定入ったわ』とか言いそうだし。


【佐野】
言わないから。


【松田】
言われましたー! 1回予定が決まったのにキャンセル処理されましたー!


【佐野】
あれは、急に出張の予定が入ってしまったって、説明したじゃないですか。


【松田】
言ったか言わなかったで言ったら?


【佐野】
……言いました。その節は大変申し訳ございませんでした。


【松田】
素直でよろしい……ところは好きなんだけど。


【佐野】
……けど?


【松田】
どうして、初デート。公園なの?


【佐野】
どうして、それは……。


【松田】
普通、初デートだったら、動物園とか水族館とか。遊園地だって……。


【松田】
それに、この間行ってみたいって言ってたプラネタリウムとかもあるじゃない。


【佐野】
そっかぁ、プラネタリウムもありましたね。


【松田】
そっかぁ。じゃない! それに、こうやって2人で話すなら個室でご飯を食べるとか。


【佐野】
やっぱり、美菜先輩の方が詳しいし、先輩が決めた方がよかったのでは?


【松田】
そうかもしれないけど。カズ君の方が計画事は得意かなって思ったから。


【佐野】
今まで付き合ったことなんて殆どないし、経験ないことを計画しても難しいですって。


【松田】
それ、本当に言ってる? 優しいし学生の頃から大人っぽかったし。


【松田】
モテるんだろうなーってサークルの女子の間で評判だったのに。


【佐野】
サークル活動と、大学の研究にしか興味がなかったですし。


【松田】
ホントかなぁ……。


【佐野】
美菜先輩こそ、そういうお誘いとか結構あります?


【松田】
先々週も会社の先輩にご飯に誘われて……立派な個室で凄くびっくりしちゃった。


【佐野】
先輩こそ、めっちゃモテモテじゃないですか。


【松田】
で、でも、ほら。私って喋ったらこんな感じだから! 仕事では口数少なめだし。


【佐野】
素の雰囲気を知ってから誘われなくなったり?


【松田】
その、誘ってはくれるんだけど。ちょっと前よりぎこちないというか。


【佐野】
うーん?


【松田】
凄く遠慮気味に『も、もし……嫌でなければ……』って聞いてくるから。


【佐野】
いや、それは。


【松田】
また行こうって言葉を気にしてるなら、そんなの社交辞令なんだし。


【松田】
誘い辛いなら無理して誘わなくてもいいんだよーって。


【佐野】
うわぁ。


【松田】
うわぁって何よ、うわぁって。私が悪いことしてるじゃない。


【佐野】
それ、脈ありだと思ってもう1回食事に誘いたかったんじゃ……。


【松田】
えっ、そういう? だって前はあんなにハッキリ誘ってくれたのに。


【佐野】
惚れててドキドキしちゃってたんじゃないんですかね。


【松田】
……えぇっ!? そ、そういうことだったの!?


【佐野】
そういうことなんじゃないですかね。


【松田】
……カズ君さ。


【佐野】
あーー。やっぱり誤魔化しきれませんでした? 実は……。


【松田】
やだ。言わないで。聞きたくない!


【佐野】
いや、公園にした理由は。


【松田】
ホントは別に付き合ってる人がいるんでしょ!


【佐野】
いや、いるわけないって!


【松田】
だって、絶対モテてるはずなのに隠そうとするし!


【佐野】
隠してない!


【松田】
私が食事に誘われたことにも嫉妬しないし!


【佐野】
会社での飲みニケーションは地味に大事だからね!?


【松田】
他の女がいるから、私にお金とか使いたくないんでしょ!


【佐野】
いや、お金を使わない場所を選んだのは、そうだけど!


【松田】
やっぱりそうだったんだ……。カズ君社畜だし、お金持ってるくせに。


【佐野】
見込み残業の前には無力なんですけれどね。


【松田】
そうやって言い訳するんだ……でも、しょうがないよ。だってあの日のカズ君は。


【佐野】
それは違う!


【松田】
違わないよ。だって、いつもクールで堂々としてるカズ君だもん!


【松田】
それに、あの告白が正常な状態だったとは思えないよ。酔った勢いみたいな。


【佐野】
確かに、勢いに力を貰ったかもしれないです、けどっ!


【松田】
そういうところ、噓つけないくらい真面目なカズ君が私は好きだよ。


【佐野】
だから、そうじゃないんですって!


【松田】
……ちょっと、冷静になろう? やっぱりちょっと暑すぎるから。


【松田】
コンビニで飲み物買って来るね。けちんぼカズ君に奢ってあげる。


【佐野】
え、っちょ、足早いなぁ……。じゃなくて、何やってんだ俺は……。


【佐野】
戻ってきたら、何とかして誤解を解かないと……。









【松田】
はぁ。


【松田】
カズ君……やっぱり他に好きな人がいるんだろうな。


【松田】
だとしたら、二股するつもりだったのかな。それとも、嫌われる為に公園……とか。


【松田】
だって、明らかに無難な場所を選びましたって顔してたもんカズ君は。


【松田】
公園のデートで満足できるなんて、小学生とか中学生ですかっての!


【松田】
それくらい、子どもみたいに思われてるのかなぁ。先輩って呼ぶくせに。


【松田】
先輩って呼び方、付き合っても変えてくれないんだもん。やっぱり……。




(雑誌を手に取り、相槌を入れたり)




【松田】
不慣れなデートだし、カズ君ならちゃんとこういうので下調べするはずだもん。


【松田】
公園なんて選ぶはずが……結婚をしたい。長く付き合いたい方との初デート。


【松田】
人混みが多いところは避けた方がいい……うんうん。すっごく分かる。


【松田】
2人での時間を大切にしたいなら……公園でのんびり過ごすのも吉……えっ。


【松田】
う、噓でしょ。だって……場所を選択すると良からぬ失敗をするので……うん。


【松田】
公園でのんびり話して、行き先や次のデートの場所を決めたり……なるほど?


【松田】
思い出話に花を咲かせるのには、丁度いい場所……そっかぁ……。


【佐野】
(あーー。やっぱり誤魔化しきれませんでした? 実は……)


【松田】
あれって、もしかして……。この雑誌……うん。今週の頭の発売だし、ふふっ……。


【松田】
すいませーん、店員さん会計お願いしまーす!

 






【松田】
カズ君、たっだいまー!


【佐野】
美菜先ぱ……。


【松田】
カズ君! はい、これ。コーヒーは無糖派だったよねっ。 ※ 食い気味


【佐野】
ありがとうございます……じゃなくて、随分とご機嫌ですね。


【佐野】
コンビニで何かいいことでもありましたか?


【松田】
うんっ! 凄くいいものがありましたっ!


【佐野】
いいコト、じゃなくて? いいモノ? イチゴ味のお菓子でも見つけました?


【松田】
それもあったけど。


【佐野】
あったんかい。


【松田】
もっといいものがあったんだよねー。ほら、これ!


【佐野】
これって……え、この雑誌。


【松田】
ふっふっふ。その反応、図星ですなぁカズ君。


【佐野】
図星って……そうなんですけど。漢字で書くとカッコいいのに使用用途がこんなにもカッコ悪いのは何故なんですかね。


【松田】
言われてみたら、図の点々が星のように見えてカッコいいかも!


【佐野】
そして、カタカタの『ノ』の形をした曲線は天の川なんですよ。


【松田】
だとしたら、この点々は織姫様と彦星様ってこと? 天の川超えちゃってるけど。


【佐野】
『ノ』の字の反対の曲線が。天の川を超える為の橋だとしたら?


【松田】
1年なんて待たずにいつでも会えるようになる! ロマンチックだ!


【佐野】
14光年以上の距離を移動できればの話なんですけどね。


【松田】
ロマンチックを自ら創り上げておいてぶち壊さないで! ロジハラだよっ!?


【佐野】
それは言葉の使い方が間違っているんじゃないんですか。


【松田】
間違ってるのは、カズ君の誤魔化し方でしょ。雑誌は逃げないんだから!


【佐野】
そ、そうですけれど。


【松田】
結婚をしたい。長く付き合いたい方との初デート。


【佐野】
読み上げないで!? 恥ずかしいから!


【松田】
ツッコミを入れる時しか、素の感じで話してくれないし。


【佐野】
先輩は先輩ですし。タメ口で話すのはちょっと抵抗が。


【松田】
もう付き合ってるんだから、そんな遠慮は要らないの。それとも、やっぱり。


【佐野】
嫌とかじゃなくて。ちょっと恥ずかしいというか……こういう経験がないので。


【松田】
こういう経験がないから? うぅん?


【佐野】
なんでそんなに楽しそうに問い詰めてるんですか。まだ何か疑ってるんでしょう?


【松田】
疑ってはないけど? やっぱりカズ君からちゃんと聞きたいなって?


【佐野】
美菜先輩と、これからも一緒にいたいから。タメ口だと、色々と馴れ馴れしいこと言ったり……さっきみたいにロジハラとか。


【松田】
1度語り始めると論破しそうな雰囲気あるもんね。カズ君の名前、かずゆきだし。


【佐野】
名前は関係ないじゃないですか……。ゆきが付いたらなんでもそうなるんですか。


【松田】
あー、またタメ口から戻った。


【佐野】
細かいなぁ。じゃぁもう言いま……言うけど、美菜先輩のこと、好きだったんで。


【松田】
過去形なの……?


【佐野】
現在進行形! 大学の頃から、ずっと俺にも優しくしてくれたから。他のメンバーよりフレンドリーな性格でもなかったのに。


【松田】
確かに、サークルには入ってたけど、勉強にしか興味なさそうな感じだったもんね。


【佐野】
学生の本分は勉強だし、サークルに入ったのだって、就職活動の面接で学生らしいことをしてないのがバレたらコミュニケーション難だと思われると思って、とりあえず入ったのが理由だし。


【松田】
え、そんな理由で入ってたの? 確かに、実質飲みサーみたいな感じなのに、カズ君みたいな真面目君がいるから、みんな不思議がってはいたけど。


【佐野】
馴染め切れてなかったのは事実だけど、その経験がなかったらもっと辛いことになったから、本当に感謝してる。


【松田】
最初、先輩に容赦なく正論振りかざしてたの、今でも伝説になってるみたいだよ?


【佐野】
はは……もう何でもいいよ。結局、上司にも同じことやっちゃったわけだし。


【松田】
それでも、少しは言い方に気を付けてた分、凄く怒られるだけで済んだじゃない。


【佐野】
次の朝に改めて謝罪して、上司とも真っ直ぐに向き合えば大丈夫だって、アドバイスしてくれたのは先輩だし、先輩様様だよ。


【松田】
カズ君の正しさは、上司も認めてくれていたんでしょ? だったらそれはカズ君がしっかりと真面目に仕事をしてきたことの積み重ねってことなんだよ? だからちゃんとカズ君がカズ君のことを褒めなくちゃ。


【佐野】
その言葉にどれだけ救われてきたか。美菜先輩ちゃんと分かってますか?


【松田】
ますって言った……。


【佐野】
それくらい、美菜先輩のことが好きで……感謝してるんですよ。


【松田】
感謝だなんて、そんなの。


【佐野】
さっきみたいに、自分を褒めていいんだって。そう言ってくれるじゃないですか。真面目にやってるのだって。自信が持てないから心に意地張ってるだけで。


【松田】
自信が持てないから、誰かにすがろうとしないで、自分でどうにかしようってがむしゃらなだけじゃなくて、研究して根拠を探して何とかしようとするの。私は凄くカッコいいなって。学生の頃からずっと思ってたんだよ?


【佐野】
確かに、美菜先輩はちょっと天然なところあるけれども。


【松田】
天然……とは思わないけれども。うん、気づかないことが多いなーって、反省はしてるんだよ。今だって、話しててやっと気づいたくらいだし。


【佐野】
美菜先輩が、会社の先輩にモテているってことですか?


【松田】
カズ君が、先輩呼び……というか、私がカズ君の先輩だったことを、凄くね。大事に思ってくれているから、先輩呼びを止めないんだなってことかな?


【佐野】
なっ!?


【松田】
それに、結婚まで意識しちゃうくらい大事にデートスポット選びしてくれたってことだもんね?


【佐野】
そこまで気づいて、なお俺のことを攻めるのは意地悪くないですか?


【松田】
ゴメンね。ちょっと私も……その、すこーしだけ浮かれちゃってさ。


【佐野】
美菜先輩、顔真っ赤ですもんね。


【松田】
カズ君こそ、顔がトマトみたいになってるし。


【佐野】
外が暑すぎて日焼けしちゃったんですよ。


【松田】
ちょっとくらい、焼けてた方がカッコいいんじゃない?


【佐野】
散々カッコ悪いところばかり美菜先輩に見られてるんですから、今更カッコつける必要はないでしょ。


【松田】
えぇー。何度でもカッコよくなって。何度でも恋させてくれないの?


【佐野】
1回の恋に一意専心してください。


【松田】
でたでた。カズ君お得意の四文字熟語。ドヤ顔したい時か何かを誤魔化したい時にしか使わないことも、ちゃんと分かってるんだから。


【佐野】
どこまで俺のこと知ってるんですか。


【松田】
カズ君検定1級を目指してます……けど、あんまりカズ君のこと教えてくれないし。


【佐野】
検定試験が作れるほどの複雑さはないでしょう。


【松田】
複雑だよ。だって、何をしたら喜んでくれるのかなーとか。どうしたら、もっと好きになってくれるかなって。ずっと考えてるんだから。


【佐野】
好きですよ。これ以上ないくらいに美菜のことが。


【松田】
えっ……いま名前で。


【佐野】
今日のデートが無事に終わったら、最後にそう呼ばせて貰おうって思ってたのに。全部先にやられるしさ。もういいかなって。


【松田】
どうして……。ちゃんと最初から呼んでくれたら嬉しかったのに。


【佐野】
美菜が自分で言ったじゃん。前の告白が酔った勢いだったって。


【松田】
確かに……そう言ったし、思ってたけど。


【佐野】
思ってた。って過去形になるくらいには、信じてもらえたわけだし。大好きな先輩に、ちゃんと気持ちを伝えて。初めて対等になれるかなって。


【松田】
対等だなんて。別にそんなことは思ってなかった……けど。


【佐野】
美菜はいつも自分の気持ちをストレートに伝えてくれるからさ。俺もそれに応えてちゃんと本当の気持ちで伝えたかったんだよ。

【松田】
カズ君……。


【佐野】
それに、美菜はやっぱり天然というか、見ていて慌ただしいところがあるから。沢山助けて貰った分、ちゃんと守ってあげたいなって。


【松田】
あーーっ! カズ君、やっぱりそうなんだ。私のこと、子どもっぽいなーって思ってたでしょ! 私の方がお姉さんなのに!


【佐野】
そういうとこだぞ。


【松田】
だって、そうじゃない! 人混みが多い時はすぐ手をつなごうとするし、やたらと食べ物をくれようとするし。


【佐野】
飴ちゃんでも食うか?


【松田】
コンビニ行ったのは私のほう!! 


【佐野】
その小気味いいツッコミも好きなんだけどな。


【松田】
その好きは嬉しくない……。そうやって私の頭をすぐ撫でようともするし。セットが崩れるから凄く嫌なんだからね。


【佐野】
スポーツ上がりとか、ぐでんぐでんに酔っぱらってる時が殆どだから、最初から崩れてたと思うんだが……?


【松田】
そうやってすぐ正論でいぢめてくるし。


【佐野】
見た目は本当にお姉さんって感じなのに。なんか可愛い系なんだよな。なんで?


【松田】
そっ、存在に疑問を持たないで! 


【佐野】
可愛いに照れてツッコミに詰まるところもいいと思う。


【松田】
……カズ君も守ってあげたいって言うけれど。それは私もなんだからね。


【佐野】
それは十分に伝わってますよ。いつもありがとうございます。美菜先輩。


【松田】
上手に使い分けやがって。カズ君のばか。バカバカばーか。ばカズ君。


【佐野】
息をするように酷いあだ名を生成するのは良くないですって。


【松田】
やっぱり丁寧語はやだ。


【佐野】
結局、そこに話が戻るんですね。俺としては、どっちでもいいんだけど。


【松田】
良くないですぅ。だって、やっぱり折角お付き合いできるようになったんだから。特別な変化とか。分かりやすい形が欲しいかなって。


【佐野】
だからこそ、2人で行こうとはならないであろうデートスポットに行きたかったのか。


【松田】
やっと気づいたんじゃん……ばカズ君。


【佐野】
どこに行くのがいいか。ちゃんと相談すれば良かったよな。ゴメン。


【松田】
ううん、いいの。だって私。カズ君が真剣にデートを考えてくれてたのが嬉しくて。予定が合わない間も楽し……他の女かもって思うようになってからは凄く嫌な気持ちでいっぱいでした。公園もやっぱり暑いです。ばカズ君責任とってください。


【佐野】
とりあえず、そろそろ別の場所に行こうか。たくさん話もできたし。


【松田】
うんっ、色々と話したいことは話せたし。何だかんだで楽しかった。


【佐野】
こっちはヒヤヒヤしっぱなしだったけどな。


【松田】
それは猛暑日を考慮しなかったカズ君の自業自得です。


【佐野】
だって。久々に晴れだっていうし。多分今日で梅雨も明けたんじゃないか?


【松田】
ふふっ、そうね。色んな曇り空も吹っ飛んでくれたみたいだしっ。


【佐野】
美菜。改めて、これからもよろしく。


【松田】
こちらこそ。結婚まで考えてたんだもんね。一意専心。ちゃんとしてよねっ。


【佐野】
しっかり覚えてるし……。まぁでも、お互い頑張ろうな。


【松田】
うんっ! これからも、末永く。よろしくお願いしますっ!